モダンキルトについて
アメリカの黒人女性が作った “The Gee's bend quilt”に心を奪われ、2013年からモダンキルト制作を始めました。
2015年からは、アメリカ人キルト作家Nancy Crowのワークショップに参加して、モダンキルトの技術を少しずつ磨いています。
年に一度、キルト仲間とともにモダンキルト展で作品を発表しています。
草木染めについて
モダンキルト制作がきっかけで、先人の本や染め仲間の知恵を頼りに独学で草木染めを始めました。
染料となる植物は自分で育てたり、拾い集めたり、染料店で購入しています。
媒染剤はなるべく環境に配慮し、食用のみょうばんと鉄を最低限の量をきちんと計量して使用しています。
染料の栽培について
2016年から草木染めの染料となる草花も育てています。
農薬は使いません。化学肥料や有機肥料は使わず、無肥料で栽培を行っています。
これまでに、藍、マリーゴールド、ウコン、紅花などを栽培してきました。
現在は借りている農地で、渋柿、クサギ、クチナシ、ビワなどの木も植え気長に育てています。
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Profile
私がキルト制作を始めたのは、1冊の雑誌がきっかけです。
2007年12月号の暮しの手帖に、「アフリカン・アメリカン・キルトの世界」という、アメリカ南部に暮らすアフリカ系の女性たちが作ったキルト(the Gee’s bend quilt)の特集が載っていました。
大胆で生命力に溢れたデザイン、鮮やかで美しい配色、そして手仕事ゆえの人の温もりを感じさせるアフリカン・アメリカン・キルトに強く心を惹かれました。また布を使って芸術表現をするという、絵画とはまた異なったアートに魅力や可能性を感じました。
こういうキルトが欲しい!なければ自分で作ってみたい!と思ったのが、キルト作りのはじまりでした。
それまでにキルトを作った経験がなかったため、まずは自己流で作ってみることにしました。雑誌に載っていたようなキルトは、デザインは大胆で簡単そうに見えましたが、実際に作ってみると技術的にかなり難しいことが分かりました。独学に限界を感じ、キルトの作り方を教えてくれる教室を探しましたが、日本で主流のトラディショナルキルトを教える教室は多々ありましたが、私が求めるキルトを教えてくれる教室は見つかりません。教室探しを半ば諦めかけていた時、当時住んでいた横浜でアメリカンキルトを教えている先生と出会うことができました。この先生との邂逅が、キルト作りがもっと好きになり、後に本場アメリカでキルトを学べるという幸運につながります
その後、キルトの先生の紹介で、モダンキルトの先駆者である、アメリカ人キルト作家のNancy Crowのワークショップに参加するという機会に2度恵まれました。このワークショップは、毎日出される課題を朝7時から夜10時まで、2週間に渡りこなしていくという、とてもハードなものでした。授業では100色の布を用意し、配色の勉強もします。参加者の多くは、手染めした布を持ってきていました。その手染め布の風合いがすばらしく、キルト制作には布の力も大事だとその時に知りました。その気付きが、後に草木染めを始めることに繋がります。
また、藍染めや柿渋染め、刺し子などの日本の伝統文化に興味を持つ海外の方が多くいることを知り、自分の中でも日本で古来から受け継がれてきた手仕事を再評価する良い契機となりました。
東日本大震災以降、自分たちの暮らしや働き方を変えてみようと考えていたこともあり、2013年に当時住んでいた横浜から小田原へ引っ越しました。小田原は、空が広くて、人ものんびりしていて、海も山もある、自然を身近に感じることのできる町です。
また自然豊かな小田原だったら、染料となる植物を拾ったり、育てたりもできるのではないか。アメリカから帰国後、今後は自分で染めた布でキルトを作ろうと決心し、草木染めを始めました。
草木染めの本を参考に、試行錯誤しながら染め始めました。キルト制作のための布を染めていくうちに、植物の持つ色の美しさに心を奪われていきました。植物を煮出している時も、植物の色を纏った布に触れている時も、心がすっと癒やされていくのが分かりました。植物の力ってすごい、この美しい色をもっといろいろな方に知ってもらいたいと思うようになり、キルト以外にも、日々の暮らしに寄り添えるような生活雑貨も作るようになりました。
草木染めを始めてから、染料となる藍や草花を育ててみたいと思うようになりました。いろいろなご縁が重なり、2018年から箱根山麓の広い畑を借りることができ、そこで藍やマリーゴールドなどの植物染料となる草花を育てています。その他にも、自分たちが日々食べる野菜なども育てています。自然環境に配慮したサスティナブルな栽培方法で、畑を耕さず、無農薬で、かつ化学肥料や有機肥料などの肥料を使わないリジェネラティブ農業(環境再生型農業)を実践しています。
キルトは、さまざまな大きさや色、素材の布をつなぎ合わせる “パッチワーク”という技法で作ります。まるでキルトを作るかのように、様々な人・モノ・コトとの出会いがパッチワークのようにつながって、今の私があるような気がします。
モダンキルトや草木染め、草花を育てることを通して日々学び、自然に寄り添った心地よい暮らしの提案をしていきたいと思っています。
山本淑子